返ってきた25ペンスーロンドンの旅の思い出
ロンドン、ヒースロー空港に降り立った。海外旅行は慣れていると自負しているが、やはり、初めての空港は不安なものだ。家族連れのこともあり、ここは奮発してホテルまでタクシーを使うこととした。英国人らしくむっつりとした初老の運転手さんはホテルの玄関で料金を渡す際、ようやく口を開いて言った。「ロンドンは明日からストライキです。交通機関はほとんどストップします。よかったら、私の車を使いませんか、いろいろな場所にご案内いたします」
願ったりかなったりの申し出である。2日間にわたり、彼はロンドンの名所旧跡を案内してくれた。幼い子供たちも、ユーモアたっぷりな彼にすっかりなついてしまった。 このすばらしい出来事もあって、その後2週間にわたる英国各地の旅を、私たち家族は十分に満喫することができた。
ロンドンにもどってからも、勿論のこと、買い物や帰りのヒースロー空港までの足はこの親切な運転手さんである。空港で別れる際には料金にそえて過分のチップを渡したのはいうまでもない。
ポケットの中をさぐると数枚のコインがあった。これを持ち帰ったとしても、日本では使えない。そう思って、彼の分厚い手のひらに全部のせた。
「サンキュウ、サー。でも、一枚だけお返しします、必ず、お役に立つと思いますから」
そういって彼は25ペンス硬貨一枚を返してくれた。なにか、あたたかい風が流れた。
空港での待ち時間、ふと思い出した。滞在中、お世話のなった友人にお礼の電話を入れるのを忘れていたのだ。
ポケットには、心をつないだ25ペンス。私は満面に笑みを浮かべて立ち上がった。
「サンキュウ、サー。でも、一枚だけお返しします、必ず、お役に立つと思いますから」
そういって彼は25ペンス硬貨一枚を返してくれた。なにか、あたたかい風が流れた。
空港での待ち時間、ふと思い出した。滞在中、お世話のなった友人にお礼の電話を入れるのを忘れていたのだ。
ポケットには、心をつないだ25ペンス。私は満面に笑みを浮かべて立ち上がった。
コメント
コメントを投稿