アラビアの海をヨットでトローリング

 サウジアラビアの東海岸の石油基地カフジで勤務していた1980-90年代の頃でした。単調な砂漠の生活にはレジャーが必要です。イスラムの休日の木、金曜日には社員はゴルフ、釣り、ヨット、ドライブなど楽しんでいました。私はもっぱら釣り、しかし他のレジャーも楽しみたい、そこで考え出したのがヨットてトローリングの釣りをしてみようという事でした。



 当地にはヨットクラブがありY-15、470級、レーザー級それにウィンドサーフィンと10数隻がそろっていました。学生時代からヨットを愛好していたヨットマンやここに来てからセーリングに魅せられた初心者など、また手軽に一人で楽しめるウィンドサーフィンなど休日ともなれば青いアラビア湾にカラフルな帆が浮かんでいました。

 この中で、安定的だが足の遅いY-15は乗り手が少なくいつも空いている状態でした。そうだ、これを活用しようと考えたのがヨットのトローリングでした。名付けてヨットローリング、シングルハンド(一人)で海に出ました。

ルアー.jpg 

 町のスポーツショップにはたいしたな釣り道具は売っていません。カフジから400kmの離れたダンマンやアル・コバルでは欧米人の釣り愛好者が多く店にはかなりの釣り具が揃っています。そこで求めたのがこれらのルアーです。
 さて、なにが釣れるのか?穏やかなある日に海に出ました。まずはサワラ、カツオを狙います。最初は日本から持ってきた山下式潜水版、これは6cmのビニールの疑似餌のイカベイトが6本ついています。しぶきをあげていかにも生きているように泳がせます。
 きた! ヨットの艫に結ばれたラインがピーンと張りつめます。一瞬でバレてしまいました。どんな大物がストライクしたのか分かりませんが6本もあるイカベイトが根こそぎ取られてしまいました。それではとルアーに変えてまたヨットを走らせます。また大きな当りがありサワラを仕留めました。

さわら.jpg
学名    :Schomberomorus commersoni(Lacepede)
英語名   :Barred Spanish Mackerel
アラビア語 :Chanad
日本の類似種:ヨコシマサワラ
体長    :100cm (写真は67cm)
 これに味を占めた私は次の休日もY-15級ヨットを独占します。今度もデカイ当たりがあり衝撃でヨットが止まってしまいます。

ハタ.jpg



























学名    :Epinephelus taubina(Forskel 1775)
英語名   :Brown-spotted Grouper
アラビア語 :Hamoor
日本の類似種:ハタ、クエ
体長    :100-120cm 10-15kg (写真は11.2Kg 112cm)

 すごい引きですがかまわずラインを手繰り寄せます。わああ!、ハタ(アラビア語ではハムール)です。まずは11kgをゲット! 


フエフキダイ画像処理ー1.jpg
学名    :Lethrunus nebulosus (Forskel, Blegvad 1944,Smith1963)
英語名   :Blue Spotted Emperor
アラビア語 :Sheiry
日本の類似種:フエフキダイ
体長    :50-60cm (写真47cm)

 次の当たりはやや小さいかな・・・。あがってきたのはフエフキダイ(アラビア語:シャーリー)です。
 なぜ、岩場に生息している根魚のこれらが掛かってくるのか不思議ですが、サワラなどの回遊魚のシーズンが去った後、これらを専門に狙って帆走しました。
 
 ある時、アラブの友人とモーターボートで釣りに出かけました。こんなプラスティックの偽物の魚で釣れるわけがない・・・と彼らは半信半疑、さればと勝手知ったるポイントを行きつ戻りつ(海底に岩場がある所)そのうち大きな当り、6-10kg級のハタを3匹も釣りあげました。

 長いアラビアの勤務、1991年の湾岸戦争でイラク軍のロケット攻撃を受けたカフジ基地、施設も相当な被害を被りました。私が愛用したY-15級のヨットも被弾して使えなくなってしまいました。戦後の基地の復旧作業をかねて、再び赴任した私はクラブの皆と共にヨットクラブを再建し数年後にはまた青いアラビア湾にセーリングするヨット群を再現する事が出来ました。修理したY-15でトローリングをする私の姿もそこにありました。




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