アラビアの至宝展とサウジアラビアの思い出

  2018年1月から東京国立博物館で開催されているRoad of Arabia―アラビアの道サウジアラビアの至宝展,これは見ておかねばならん、実は私は長年にわたってサウジアラビアで勤務していました。妻と二人の子供も4年半にわたってサウジで暮らしていました。そこで終了ぎりぎりの5月8日妻と連れ立って見学しました。懐かしいサウジの思い出と共にご紹介します。


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 博物館に入ると古代の石像が出迎えてくれます。だが、私たちが見てきたアラビアとは雰囲気が違います。現代のサウジアラビアは聖地マッカやメディーナをかかえたイスラム教の中でも厳格な戒律を踏襲しているスンニ―のワッハーブ派ですから、このような偶像は現地では見たことはありませんでした。

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 現に日本から来るお客は手土産に藤娘など人形をもってくる人が多いのですが、厳格なイスラム教徒の友人は困った顔をして「もらったが私には不必要だ、これはあなたにあげる」と言われた事もあります。会場には顔がそがれていたり、頭部のない石像が展示されていましたから、イスラム以後は偶像はご法度だったのでしょう。

 そんなことですから在任中は同地の古代遺跡に触れる事がありませんでした。休暇の際、イラク、シリアのメソポタミア文明、イランのダリウス王朝時代の遺跡を訪れようと旅行のプランを練りました。まず手始めにエジプト文明、壮大なピラミッドやスフィンクス、ツタンカーメンの墓、カイロ博物館は心躍るものでした。次はメソポタミア文明だー そう思っていた矢先イランーイラク戦争(1979-1989年)が勃発し、旅行プランはご破算になってしまいました。その代わりに本社に帰任の際、足を延ばしてギリシャ、クレタ文明の遺跡を堪能しました。

 今回のサウジアラビアの数々の遺跡からの出土品を時間をかけ十分満喫しました。展示品の出土地のリアド、アル・コバル また、古代貿易の拠点、タルート島へは何回か訪れたこともあり、大変興味深いものでした。

           

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 サウジアラビアの首都リアドの近郊には2010年に世界遺産に登録されたデルイーヤの遺跡があります。

 ここは第一次サウド王国の首都でしたが1749年にトルコのオスマン帝国によって破壊されてしまいました。私たち家族で訪れた時は廃墟のイメージでしたが、その後訪れた時には整備されていました。サウジ至宝展にもパネルで紹介されていました。

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 リアド近郊のトワイク山脈、この岩石地帯をトレッキングしました。切り立った山の平たい山頂には種々の貝や巨大な黒いサンゴの化石が転がっており、また、岩肌には1メートルもあるアンモナイトの化石が埋もれていました。 白亜紀後半に始まった地殻変動で形成されたアラビア半島。その壮大な砂漠の中に眠る古代遺産、サウジは考古学の宝庫と言えましょう。

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 アラビア湾に面した東部州のアル・コバル(ダンマン近くの町)には家族揃って日帰りで買い物に出かけたものです。私たちが住んでいたアル・カフジからは片道400kmの砂漠のハイウェイを約3時間で走破しました。

 ここから発掘された古代の壺や土器がアラビア展に展示されていまいた。砂嵐が去った後のダンマン付近の砂漠には昔の中国の陶器の破片が風で拭われた砂漠の表面に散乱しています。米系石油会社アラムコ(当時)の社員たちはそれを集めて貼り絵を作っていました。 

 それを聞いて私も砂漠の中を探してみましたが、数個しか集められず、そのままになってしまいましたけれど・・・。暇ができた今になって、あの時もっと集めて置けば、絵ができたのに・・・と残念に思っています。

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タルート島、ここは今では陸続きになっていますが、昔からペルシャやインドなどの貿易の拠点であったそうです。ダンマンから約1時間の道のりです。

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 現在、ナツメヤシに囲まれた島内の漁港付近に昔の砦が残っています。当時、貿易に使われたであろうダウ船はインドあたりで建造され、いまでも当時と変わらないそのユニークな船型はアラビア湾を航行しています。

 話はアラビア至宝展に戻ります。

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 やはり、イスラムの台頭後の世界は私にとって懐かしいものでした。イスラームの聖地マッカ(メッカ)のカァバ神殿の扉、クラーン(コーラン)、サウジ建国の父と言われるアブドゥル・アジズ(イブンサウド)王の遺品などの文化財を見て現地の思い出を新たにしてくれました。

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また、興味を引いたのはそのころの鷹狩の道具、私も現地では鷹狩に招待されたこともあり、精悍な鷹を手に持った時のその重さを思いだしました。

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ニュースでサウジアラビア政府は観光ビサを発行する、と聞きました。私の在任中は就労ビサしか許可されなかったので、サウジ国内を観光目的で旅行する人はわずかだったと思います。アラビアの道―これからはサウジの遺跡を見る機会がめぐってきます。私もまた、訪れる事ができるのでしょうか。

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