砂漠のシーフード・バーベキューは楽し
アラビア半島、長い酷暑の夏が終わり秋が駆け抜け、短い冬が来ました。2月になってこの砂漠にも春がやってきました。普段人けがないこの砂漠のあちこちにはテントが立ちならび、人々は大自然のなかでリフレッシュしています。都市部のアラブの人々には又とない娯楽なのでしょう。ここ、サウジアラビアのカフジに駐在する日本人従業員たちもまたピクニックをかねた砂漠のバーべキューを楽しんだものです。
よし、今回は日本の味ならではのシーフード・バーベキューをしようじゃないか。この日のために前の日に釣りをしてアジやタイ、私も張り切ってこの時期に岸におしよせるモンゴウイカを、翌日の朝には家族と海岸のアサリを掘りに行きました。砂漠に点々と設営されているアラブのテントをさけて、わがニッポン族の一行は、彼らから大分離れた場所に登山テントを張り、その脇には子供を含む約30名の胃袋を満たす炉を築きました。
肉、野菜、それに今日の主役の魚介類、砂漠にはアジの塩焼きや焼きイカの煙がたなびきます。
砂漠のなかで、ロックの演奏もはじまりました。
しばらくして地平線のかなたに車の砂塵があがりました。ベドウィン(遊牧民)が目ざとく小さな黄色いテントを見つけたようです。テントを訪れる人を歓待するのはこの国の礼儀です。
サウジアラビアはイスラム教国の中でも一番厳格なワッハーブ派の国で、女性は黒いアバーヤですっぽり身を包み、ベールで顔を隠しています。 今ここにいる日本人たちは男女の別なく談笑し、女性たちは春の陽気にノースリーブ、ヒップの線もあらわなジーンズ姿です。宗教心篤いアラブの人たちから見れば、不道徳極まりない輩といわれても弁解の余地はありません。こういう事態を避けるためにわざわざ地元の人のテントから遠くはなれた場所に設営したのに。
女性たちをテントの脇に寄せて男性陣は歓迎されない来訪者を待ちました。
車には二人の男が乘っていました。私たちは精一杯笑顔を見せ歓迎の意を表しました。が、男たちはそのまま立ち去っていきました。
我々はほっとしながらも口々に言い合いました。
「宗教警察に訴えにいったのだ」 「いや、女性をみて遠慮したのさ」
私は砂漠に漂う魚と醤油の匂いに羊しか知らない彼らがびっくりしたのだと推測しました。当時、魚を食べるアラブ人はほとんどいませんでした。ましてや、砂漠の遊牧民にとってはこの匂いは「未知との遭遇」だったに違いなかったからです。
この話は1978年ころの事ですが、その後、湾岸戦争の多国籍軍の女性兵士の態度や振る舞いがきっかけと言われていますが女性の服装にたいし、イスラムの戒律は一段と厳しさを増し外国人女性といえども アラブのご婦人と同じく外出時には黒いアバーヤの着用が義務ずけられました。
最近、サウジ政府は女性たちの自動車の運転、サッカーの観戦などを認めましたが、やはり保守的な考えの人々の多い中、どこまで女性の近代化がなされるのでしょうか。 ニュースをみながら、ふと昔の思い出にふけりました。
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