えっ!こんな顔してお前さん魚なのかい?-ペルシャ湾(アラビア湾)のおもろいやっちゃ

 「ちょいと見て~な、おもろい顔したやっちゃやなあ。これほんま、魚かいな」アラビアの海で釣りをしていた時、会社の同僚が釣りあげた魚を見せてくれました。 [なに言うてんねん。・・・ん? ほんま、けったいなやっちゃ」思わずボケとツッコミのお笑いで答えてしまいました。まわりのアラブの釣り人たちに聞いても皆、首をかしげています。


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 この魚の体長は15センチ、頭が丸く眼がでかい、その大きな口の両端には折りたたみ式の唇があって左右に広げることができます。しばらくしてそのおもろい魚は私の竿にもかかってきました。置き竿の鈴がチリリと鳴ってすぐ止まります。合わせてみると反応がありません。 バレたかとそのままにしておくとまた、チリリ。

 リールを巻きあげてみると、だらりと垂れ下がって釣れていたのがこ奴です。そいつのでっかい口から餌を引きぬいてやると、なんと、3センチものいかの切り身を呑みこんでいたのです。

 釣り仲間たちが笑いながら「大物だねえ。今晩の夕食のおかずをゲットしたね」彼らの冗談を背に受けながら、コイツの正体を調べてやろうとクーラーにしまいこみました。

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 夕方、図書館から魚類図鑑を借り出して調べてみました。横からみれば正に魚の姿です。ページをめくってみたものの、それに相当する種類は見つからず、多分「かえるうお」の一種だろうと勝手に思い込みました。

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 会社で仕事をしていたある日、部下のファラーがやってきました。 大きな眼鏡、大きな口をあけてしゃべる彼、私の正面にはあの得体の知れない魚のそっくりさんがいました。まじかよ?私の頭の中にあのおもろいやっちゃと謹厳実直なこのファラー君が重なって焼き付いてしまいました。

 ある休日、例の通り釣りを楽しんでいるとアラブの釣り仲間がやってきました。

「また、コイツが釣れてしまったよ、これは一体なんだ」

 アラブの釣り仲間の分厚い手の中にあの魚がうごめいていました。とっさに私は言いました。

「あーこいつか、これはファラーっんだ」

 ファラーはアラブではごく一般的な名前ですから魚の名としてもおかしくありません。と、いうわけでこの魚の名前はきまってしまいました。

 私が部下のファラーを連想して命名したことは本人は元より誰も知りません。いまでも彼らは、またファラーが釣れてしまったよ、と言っているでしょう。ところで 一体この魚の本当の名前は何というのでしょうか、いまだにわかりません。

 しかし、このファラーを誰かが食卓に乗せたという話はまだ聞いたことはありません。食べられるのでしょうか?


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