リッチな味覚、アラビアウチワえび

  ナ、なんだ?これは? こんな不細工な海老はいままで見たことがありませんでした。しかし、エビに相違ありません。コイツは食えるのかと言うのが最初の疑問でした。サウジアラビアで赴任中、アラブのスタッフが持ってきてくれたウチワエビです。茹でてたべると美味しいですよ。そう言い残して彼は帰って行きました。つくづくこのエビなるものを見ていると、体長25cmの半分を占めるでかい逆三角の頭、そこには伊勢海老に見られるような長い角もありません。腹側にはなけなしの短い脚が生えています。まるで、関ケ原の合戦で黒田長政が着用した巨大な「一谷形兜」を思い浮かべました。 顔から下は正に伊勢海老、さっそく魚類図鑑で調べてみました。

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 学名: Thenus orientalis (lund)
 英語: Scyllarid Lobster
 アラビア語: : Omm al Robyan
 日本の類似種: ウチワエビ
         ゾウリエビ

 Fish of the Arabian Gulf にもちゃんと記載されていますから、市場価値は十分あるようです・(後日聞いた話では入荷するたびにすぐ売れきってしまうとのことです)

 ともあれ、さっそく茹でて食べてみました。ほかほかを丸ごとマヨネーズをかけてガブリと一口。コ、これは! まいう~やウマッ!を通り越していますよ。ジューシーな味覚、コレステロールなんか気にしないで何匹も食べてしまいました。ああ、日本の家族にも食べさせてやりたいな。でも、日本だったら一体いくらするんだろう? よけいな心配をしてしまいました。

 チャンスが訪れました。 3月のある休日アラブの友人たちと夜釣りを楽しんでいた時でした。海面を無数の海藻が流れてきました。 おかしいぞ?海藻にしては切れぎれだ。あっ! エビの群れだ。玉網を取りだしてすくい始めました。すぐバケツに2杯も取れました。 潮目が変わったのか、ものの15分で群れはフッと消えてしまいました。

 独身寮に持ち帰った翌日は刺身に加え、大いに堪能しました。まてよ、一人で食べるのはもったいないし気が引ける。ほかの人にも味あわせてやりたい。 

 社宅に持ち込みました。 その晩は、昼間その美味さを吹聴しすぎたか方々の日本人が集まっていました。ネタは十分すぎるほどあります。 得意満面にそのエピソードを語っていると奥さんが大皿に盛ってきたのはおえび様のフライ。日本から持ってきた貴重なブルドックソースとからしをたっぷり塗って、しっぽをつまんでガブリ。

 「おいし~い!ウッソオ。これなによ~お」招かれた奥様たちも口々に言います。 あとの話では自慢げな私の顔はウチワエビにそっくりだったそうです。きっと、ブサカワイかったんでしょうね。

 アラブ料理でも出てきます。 頭を取って縦割り二つ身のエビにニンニクバターと塩コショウをまぶし金網で焼き上げ、バジルでアクセントをつけてあります。その上にレモンを絞ってから、がぶり! また食べてみたい一品です。

 ちなみにウチワエビはアラビア語で オンム・アル・ルビアンと言います。意味はルビアンのおっ母さんです。アラブのおっ母さん!さすが料理の神髄を見せますね。

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