猫を高い値で買ってくれれば駱駝を安く売るー実際に見たアラブの格言

 私がかつて住んでいたサウディアラビアでは砂漠に駱駝が群れをなしています。 現代では駱駝はもう砂漠を渡る舟としては引退組、今ではベドウィンと呼ばれる遊牧民たちはトラックで移動しています。 何のために飼っているのでしょうか? わかりません。 また町では野良猫がウジャウジャたむろしています。 猫どもは我が物顔で家庭のゴミ箱をあさっていますから、鼠をとることも忘れているでしょう。 今では人の生活に役たたずとも、これらの動物たちは話の種にされています。

アラビアの酷暑が去った11月から3月末まで、町の人々は付近の砂漠にテントを張り、週末や休日は勿論、夕方からもそこに集まってお茶飲み話に明け暮れています。 私もしばしばその席に招かれていました。

猫を高い値で買ってくれれば駱駝を安く売る

これはアラブでしばしば言われる格言だそうです。

お~い猫はどこにいる? 早くこないとオレ安く売れないよ~



その席で、ある男があこぎな(うまい)商売をしていると話題になって、 そんな格言が飛び出した時に私には何の事かさっぱり判りませんでした。 そこで、その意味を訊ねてみました。

カティーブさんが笑ってその格言のいわれを説明してくれました。

昔、ある男が飼っていた駱駝がいなくなったので、その男は神様に「もし駱駝が見つかったら1ディナールで売ってもよい」と誓いをたてた。 しばらくして駱駝が見つかったので、男はこんなバカな事を言ってしまったと後悔したが天罰が下るのが恐ろしい。 そこで、彼はに駱駝をつけて売る事とした。

「猫は1000ディナール、駱駝は1ディナール、一緒でなければ売らない!」 というものでした。

抱き合わせの品(猫)は高いが、欲しい本体(駱駝)の安値に曳かれてつい買ってしまうー インチキ商売ですね・・・これは。

「一寸、待ってくれ」私は口をはさみました。

日本では値の張るものは品質の良い製品だ、おまけの品はそれを売るための宣伝だから安いものに決まっている。 げんに猫なんかそこらにいくらでもいるから子猫を拾ってくればよいし、駱駝がそんなに安いのなら病気持ちか年取ってよぼよぼになってると疑うよ。 それにそんな商売は詐欺だと警察にしょっ引かれると反論しました。

まわりの人たちは何でそれが犯罪になるのだ? 怪訝そうな顔をしています。 この猫と駱駝の格言はアラブの人は皆知っているあたりまえの話なので、あこぎな(うまい)商売とは感じていても誰も罪になるとは思っていないようです。

アラブでは、とにかく相手が納得すればよいのだ。 買って騙されたほうが悪いのだー そんな意見も出ました。

物の値段は交渉できまる

この格言どおりアラブでは屁理屈を交えてでも相手と交渉しなければなりません。 どんな理不尽な言い分でも長時間にわたり捲くし立てられると、尤もという気持ちになってくるのも不思議ですね。 仕事の中でやむなく妥協してしまった後で「やられた!」と思うこともありました。

お互いが納得したのですから猫にいくら高い値段をつけてもかまわない、駱駝を安く買えればよいのだー と? ・・・でも腑に落ちませんねえ。 この格言は・・・。



そういえば子供のころグリコのおまけが欲しくて、森永キャラメルをやめてグリコばかり買っていたことを思い出しました。

: 新聞に「100円のコーラを1000円で売る方法」という本の広告がでていました。 (内容は見ていませんが)
アラブの格言どおりですかネエ。 あぁ、ニッポンよお前もか・・・・。

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