品物にケチをつけるとき、彼はそれを買いたがっているー実際に見たアラブの格言

 サウジアラビアに赴任していた時の事です。駐車中の車をぶつけられました。当て逃げです。ドアが大きく凹んでいます。警察には届けましたが仕事が忙しい中、修理に出さずに1週間ほど乗り続けていました。スーパーで買い物をしようと駐車したところ見知らぬ男が近づいてきました。彼は握手を求め、こともあろうに私の車にケチをつけ始めたのです。 


 修理をしなくてはならぬしお金もかかる。そんな気持ちでいる中、その男はドアが凹んでいるしバンパーが曲がっている、タイヤもすり減っている、あちこちサビが出ているなどと言いたい放題。余計なお世話だ、この車は10年ものだから、傷んでいるのは当たり前だ、と些か気色ばんで言い返しますと
 「ビカム・ハザー(How much)?」  「・・・・」

 ははあ、コイツはこの車を買いたがっているな、という事がわかりました。

品物にケチをつけるとき、彼はそれを買いたがっている

 そんなアラブの格言があります。エンジンも好調だし別に走行に支障はない、だから売る気は無いと丁重にお断りしました。

 翌日も交差点で別の男から同じような申し出を受けました。修理代がかなり掛かりそうだから俺が直して使うからということでした。 しばらくして、また別のヤツも売ってくれと・・・。

 そんなうるさい事を何度もいわれるので、このポンコツ車を直す際に、車体も綺麗に塗り替えました。見違えるようになった車を運転していると、エスマ!〔旦那〕と又呼び止められます。「How Much !」 またかあ~。

 実はこの車は1982年型の大型のアメ車、シボレーのバンです。10年もの〔当時)で古いが3ヶ月前に帰任した日本人から買いました。後部トランクが広いので、ゴルフや釣り道具、仕事のヘルメットや安全靴など色々な物を入れっぱなし、ずぼらな私には便利な車です。

 彼はしつこく迫ってきます。今度のケチをつけるセリフは

 「これはお前さんのような一人者が使う車じゃない。でかすぎる。家族の多い俺が使う車なんだ、How Much !」 

 人がどんな車に乗ろうが余計なお世話ですね。

 会社のアラブ従業員から何人も「売ってくれ」と電話がありました。ピカピカの新車同然に見える厚化粧のシボレーバンは目立つのでしょう。それに多人数の家族が乗ることができる車ですから皆が欲しがるのです。

 煩わしさから逃れるために私は、それをオークションにかけました。中古で買った値段と修理費を足しても一寸お釣りが出るほどの価格で売れました。 

 次の車はBMWにしましたが、帰任するまで一度も 「How Much !」 の声は掛かりませんでした。

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