もし冒した罪を神が赦さなかったら天国は空っぽになるー実際に見たアラブの格言
世の中にまったく罪を犯したことのない人間はいるでしょうか。道に落ちていた硬貨をポケットに入れても、罪になりますね。アラブでは表に出ない罪は,七割がた許されるという格言があります。そのため、うやむやのうちに葬られる悪事が多いようです。たとえ犯した罪が発覚しても、滔々と自分を弁護します。中東で赴任中、私はこのような場面に出くわし、辟易したことも何度かありました。
湾岸戦争のあと、私の部下が1週間も無断欠勤したので、それなりの手続きをすませました。なんらの消息もないまま1ヶ月たった後、彼がひょっこり会社に出てきたので、規定にしたがって君は会社を首になった旨をつたえたところ、解雇は不等だと申し立てました。 実は、彼はイラク軍が残していったグレネード・ランチャー(携帯式ロケット砲)を記念品として持っていたため、警察に捕まったそうです。「皆もやっていることだ、俺だけじゃない、捨てていったものを持っていたといって泥棒したわけではない」と会社に復帰することを主張しました。 そして一ヶ月間の拘留の判決を受け、禊はすんだという裁判所の書類を提出してきました。 会社は言い分を認め彼は復職しました。周りの人達も私も彼の罪について関心を払う事はありませんでした。
アラブでは、罪の清算がすんだ後、そんな事はもうなかったと、もうその身は潔白とされ人からは後ろ指は差されません。アラブの格言では
もし冒した罪を神が赦さなかったら天国は空っぽになる。
神さまは誰でも天国に受け入れてくれます。寛容の心は神の意思です。
日本では1回でも罪をおかせば、世間から疎外されてしまいます。 「罪を憎んで人を憎まず」私たちにもそんな言葉があります。(再犯を繰り返す不逞の輩は差し置いて)、このアラブの格言にあるように人を赦すという心が必要かと思います。
もう一人、武器の密売を繰り返していた男がいました。 大掛かりな組織でイラク軍の残した武器をトラックに積み込んで輸送中摘発されたのです。5年の服役を済ませたあと私のデスクの前に現れました。 見憶えのないヤツだったので、握手をして名前を聞きますと、5年前にこの部にいたので、復帰したいとのことでした。
会社を辞めたのだろうとの問いに、刑務所に入っていたとの返事でした。 武器の密売については、皆もやっていた事だ、捕まったのは不運だったとの返事がかえってきました。 武器にたいする善悪の感覚が日本とはちがうようです。
会社人事は彼のいたポジションを5年も空白にしておくことは出来ません。 お前さんのポジションの空きはないよ、他に仕事を探しなさいとお引取り願いました。 ところが、俺はその男より仕事に熟練している。彼を首にして俺を雇え、と答えが返ってきました。 あまりの身勝手さに私は「出てゆけ」と言いました。
後日、聞くところでは彼は町にお店を開いたとのことです。 人々は彼を受け入れたようです。
このように、アラブでは罪を犯した人に寛容な心を持っています。彼のように自分勝手な男でも、イスラム教徒の戒律を守ってゆけばいずれは天国に入れてもらえます。 だから、次のような格言もありました。
死んだ男はくだらないヤツでも葬式だけは熱狂的
なるほど、イスラームでは神様は誰でも天国に受け入れてくれるのですから、皆に祝福されるのですねえ。でも、天国が満杯になったらどうするのでしょうか?
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