アラビアのトリュフかな?ー沙漠のきのこ「ファガ」
秋の味覚、きのこ採りのシーズンがやってきました。だが、私が赴任していたサウジアラビアでは春にきのこが生えるのです。ニ月ともなるとアラビアの沙漠にもなけなしの春がやってきます。一年の大半が50℃にも達する猛暑の乾いた大地に雨が降り始め、緑の帯が地平線まで出現します。しばらくするうちに花々が次々と咲き始め、暑さで枯れていたと思っていた潅木にも若葉が彩りを添えます。ややっ!この中に人影が、アザーン(お祈り)をしているのか、しかし、ひざまずいて祈っている様子はありません。一体何をしているのか奇妙な仕草を繰り返しています。 やがて人影はあちこちに移動し始めます。
私は部下のアラブ人にこの男の様子を話し、一体なにをしているのかを訊ねてみました。実は、この男は沙漠の珍味ファガ(きのこ)狩りをしていると言うのです。
ファガ、(もしくはファッガだったかもしれません)一見じゃがいものような形をしている沙漠に生えてくるきのこです。 雨上がり、乾いた大地にかすかなひび割れが出現し、ほんの0.5センチほど盛り上がってきます。 アッラーの恵みの雨は土の中のきのこを目覚めさせたのです。 このかすかな砂の変化はなかなか見分けがつかないのです。 沙漠の中の男が何度も地面を見つめるわけを納得できました。フランスのきのこトリュフは豚か犬に探させますが、アラブのファガは日本のきのこ狩りと同じく人の目で探します。
春の沙漠ーきのこはどこに隠れているのだろうか?
この貴重品のきのこの菌は砂の中にひっそりと身をひそめ、毎年同じ場所に生えてきます。ファガはよほどの経験者でなければ見つけられないそうですから、それゆえ高価な品物です。白っぽいものは高級品、茶色は値段が安くなりますが、キロ数千円もするのです。 まつたけと同じですね。
仲間の日本人とかたらって、男のいた沙漠の付近にきのこを探しに行きました。あちこち掘り返して見ましたが、なにもありませんでした。やはり、無理ですね。
このファガ、運よくクウェイトのマーケットで手に入りました。品質の悪い茶色いきのこですが、それでも大金をはたいて買い求めました。 その晩、早速料理にかかリます。
凸凹した表面、こびりついた砂が中々とれません。風味をそこねてしまうのを警戒しながらも水でごしごし洗ってしまいました。塩こしょう、バターでいためたキノコソテー、それにゆでてわさび醤油の和風味、この2品を賞味してみました。
ムフウ~・・・・・? まつたけ、しいたけ、まいたけなどの味覚に慣れた日本人の舌には馴染めないかもしれませんが「実に素朴な味」とでも言っておきましょう。 ホメ言葉で言えば、「とらえどころのない広大な地平線感覚」 これぞ、究極の砂漠料理体験でした。
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