はしごをどんなに高く伸ばしても俺の頭まで届かないー実際に見たアラブの格言

 アラブ人は自尊心の高い民族です。自分の名誉を傷つけた者は決して許そうとはしない感受性の強い性格をもっています。私も会議の席である人の失敗を責め、彼に恥をかかせたとひどく恨まれ和解するまで長い時間がかかりました。『アッラーと羊と俺』しかない土地、それがアラビアだ、といわれています。 すなわち、常に自己の存在をアッピールしようとし、自分の利益のために万事が進まねば気がすまないようです。


 私は中東で仕事中たびたびこういう場面に出くわしました。この社会では当然の行為でしょうが、日本人から見るとどうも身勝手な印象をあたえます。

アラブ陣とらくだ.jpg

どうも次のアラブの格言どおりのようです。


はしごを数千台ならべても俺の頭まで届かない
 
また、こんな言い回しもあります。
わが井戸は清らかな水、よその井戸は泥水の残り滓

ここまでくると、我々がよく言う「隣の芝は青く見える」という格言とはまったく正反対ですね。
                              
 勤務評定が終ったある日、部下のハムッド(仮名)がやってきました。貴方は誠にけしからんといきまいています。 お茶をすすめ、一体何があったのだと話を聞きました。彼は私に恥をかかされたというのです。

 なぜ貴方はあいつに私より良い点数を与えたのか、彼は私の部族の下僕にすぎない。これでは部族の中で私の顔がたたない、私は笑い者にされるだろう。貴方の部下がロバと同じに見られていいのか、との言葉がかえってきました。評定の内容が漏れたのもさることながら、これを聞いて唖然、歴然、憮然とはこのことです。自尊心を傷つけられ不利益を蒙ったと思った彼は容易に引き下がろうとしません。自分のことしか考えない彼にいささかムッとしましたが、これでは仲たがいのままになってしまいます。そこで彼に向って言いました。

 「私はお前のグレードの高い仕事に対し、お前がそれを遂行したか否かについて私は評価を下した。お前がこれよりもっと良い評価を求めるならば、グレードの低い簡単な仕事をしている彼と変わったらよい。その代わりお前の給料はぐっと下がって笑いものにされていいのか」
と苦し紛れの屁理屈を並べ立てました。

 ハムッドも自分の部族にたいし、都合の良い言い訳を見つけたと思ったのか帰っていきました。彼は多分、俺の仕事はむずかしくエリートの競争が激しいのでこの点しかもらえなかったのだ、あいつのは簡単だから良い点取るのは簡単さ、とでも言って顔を立てたのでしょう。
 別の格言に曰く         
不運なことで恥をかかされても、自分の足であるけ

 彼はそれを実践したようです。
  
最近、日本では企業がどんどん海外に事業を移すようになりましたね。 外国人の採用も加速してグローバル化が進んできたようです。経営は今までの日本的なものの考えでは通用しなくなるでしょう。 ところで、日本人の貴方は勤務評定で上司に文句をいったことがありますか。

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