今日はうちで、明日はお宅でー実際に見たアラブの格言

 砂漠で生きる民は皆の協力がなければ生きていけないでしょう。相互扶助の精神です。手を貸してほしいと頼まれれば、喜んで協力してくれます。明日はわが身ですからね。私も砂漠の道で車が故障してしまった時、何人もの人が着物がよごれるのを嫌がらず押しだしてくれました。遊牧民のテントを訪ねたときは、けして裕福とは思えない彼らが羊を2頭も屠って歓待してくれました。

 だが、こうした歓待に対して、次には私が何かをしなければなりません。皆、次の何かを期待しているのですから。だから、部下たちと羊の丸焼きパーティをする際、歓待を受けた遊牧民の彼から羊を買いました。

 アラブ人はかなり見栄坊です。彼らに子供が生まれると、男の子だったら葉巻を、女の子だったらチョコレートを皆に配ります。ところが彼らは子沢山、次から次へと子供が誕生します。10人以上はざらです。ちなみにサウディアラビアの女性一人が生涯で生む子供の数の平均は8人だそうです。

 私の部でも次々とスタッフたちが『今日はうちのお祝い、明日はあいつのお祝い』と、どんどん派手になっていきます。おかげで私のデスクの引き出しは葉巻とチョコで一杯になってしまいました。祝い事は給料の高い安いにかかわらないから、これではサラリーが低いヤツはたまったものではありません。

 そこで一計を案じ、祝い事はオフィス内で30分間の簡単な朝食会に代えて行うことにしました。平べったいアラビア・パンのホブス、ひよこまめを練ったハンモスやゆでたまごとコーヒー、お茶くらいですから、50人分で50リアル〔1600円〕もあれば十分です。就業時間内にこんな食事をすることは会社の規則で禁止されていますが、無視することにしました。彼らにもこのアイディアは受けました。私も新車を購入した時に主催しました。スタッフの一人は子供が高校を卒業したからと、家庭料理を大皿に盛ってくるは、あいつに負けまいと大きなケーキをもってくるは、またまたエスカレートしてしまいました。

今日はうちで、明日はおたくで

との砂漠の格言のささやかな互助精神は彼らの自尊心の前にもろくも崩れ去ったようです。 このように

気前の良さはすべての欠点をかくす
とはアラブの格言のひとつです。

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