砂漠には時間がない、ただ、昼と夜があるのみー実際に見たアラブの格言
日本人のビジネスマンを悩ますのがいわゆるアラビアン・タイムでしょう。実際、アラブ人と約束していて時間が守られたことは、まれであったと記憶しています。30分は許せるとしても1時間、2時間の遅刻は許せません。会合の際、アラブ人達は三々五々集まってきて、全員が揃うまでお茶を飲みながら談笑しゆうゆうと待っています。好奇心もあって、あるアラブの友人に「なぜ、時間を守らないのか」を聞きました
彼は「私たちは皆、あなた方日本人(欧米人もふくめ)は、なぜそうあくせく物事を運ぶのだと不思議に思っている。時間に間に合わないのは、別の用事が出来たり、事故で遅れたりする場合があり仕方のないことなのだ。人間の行動はすべてがアッラーによって支配されている。神の意思に反して人間が〔時間を〕決めることは出来ない相談なのだ。マーリッシュ〔気にするな〕」実際、会社で従業員が定刻に出勤してくることはまれでした。また、終業時間前に帰ってしまう奴もいて、仕事の半分はこうした勤務時間の人事管理に費やされてしまいます。私も部下に何度も注意をうながしましたが効き目はありませんでした。徹底的に取り締まろうと82人もいる部下の一人一人のさぼった時間をノートに書きとめ給料を差っ引いたこともありましたが、皆の総スカンをくらい政府に訴えられそうになりました。これだけで、くたくたになりました。
交差点の信号が変わり青になりました。アクセルを吹かして飛び出るのは日本人かアメリカ人が運転する車です。アラブ人たちの車は5秒は遅れて発進します。ここにもあまり時間を気にしない性格が現れているようです。
砂漠には時間がない、ただ、昼と夜があるのみ
前にもこのブログで紹介しましたが、『中東で仕事をするにはアラブのIBMのコンピュータに精通していないと失敗する』との日本人駐在員のことわざがあります。IBMの「I」は インシャラー(神の思し召しのままに)、「B」はボクラ(また明日にでも)、「M」はマーリッシュ(気にするな)のイニシアルです。
これを聞くと、皆さんは何と無責任なと言われるでしょうが、長年アラブの世界で暮らしていると、これが当然の事と思われてくるので不思議です。たとえば、部下に明日まで仕事を仕上げるよう頼みます。すると彼の答えは必ず「インシャラー」すなわち、時間や運命が神の手中にある限り、彼が出来ない事もあり得るのです。 約束が守れるか守れないかは「ボクラ」、明日にならないと分からない。守れなかった時には神のなせる業、だから「マーリッシュ」で気にしないのです。
別のアラブの格言では『明日できることを今日やる奴は馬鹿だ』とあります。何が起こるかわからないから、今やっても無駄になる。すなわち、『蟻が一年がかりで築いた塚を、らくだは一足で破壊することができる』急がば回れというわけです。
現に本社から突然の指示変更で仕事が大幅に遅れてしまった事がありました。電話やFAXでやいのやいの責められても私は時間を気にしないことにしました。
そして声を大にして言いました。
「インシャラー・ボクラ・マーリッシュ」
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