羽の色が同じ鳥は群がりたがるー実際に見たアラブの格言

 現在のアラブ諸国の国境線はかつての欧米の列強が自分の思惑で勝手に国境線を引いたもの、しかし、中身は同じ言語を有する民族です。だから、国という意識の元では意見が中々まとまらないのが現状かとも思います。こうしたアラブの社会では同じ部族や大家族だけでしっかりとまとまっているようです。 


 アラブでは、「羽の色が同じ鳥は群がりたがる」という格言があります。.西欧にも同様の言い回しがあったと記憶していますが我々が言う「類は友を呼ぶ」という意味ですね。皆で渡れば怖くないとか、旅行するなら団体で・・・,などは日本鳥の癖でしょう。 それに派閥政治、ぞくぞく誕生する新党、このアラブの格言は日本のものとした方がよさそうです。

  

 1970年代の私のサウディアラビア赴任中、王様の病気が快癒しました。このお祝いで国中が3日間の休暇となり、我々外国人従業員もその恩恵をこうむることとなりました。彼らから夕方のお祈りが済んだあと、祭りがあるから是非来て欲しいと電話が何本もかかってきました。

 イスラムのアザーン(お祈り)は近くのモスクのミナレット(尖塔)に備え付けられたスピーカーから声が流れてきます。 お祈りのすんだそのあと人々はナツメやしの実を食べたり砂糖のたっぷり入ったミント紅茶、 カルダモンの香り豊かなアラビックコーヒーを飲み団欒の時間を過ごします。 この日はお祭りですから、踊りや音楽などの余興もあるわけです。

 そういうわけで、私は家族をつれて出かけてゆきました。道路わきの街灯に照らされた多数のテント群が見えてきました。

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 砂漠に敷き詰められたじゅうたんの上では大勢の人が踊っています。 そこは大部族の一団です。一方、電灯の光があまり届かないこじんまりとした少人数のテントは、遠くの地域から来た人たちでしょうか、なんとなく活気がありません。 私が姿を見せると、「ファッダル!」とアラブ人たちに手を引っ張られて招き入れられます。あるテントではアラブの伝統的な棒術を披露してくれました。

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 あまり長居は出来ません。なぜなら、私の知り合い(実は会社の私の部下達)はいろいろな部族に属していますから、公平を期するためあちこち回らねばならないからです。

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 パレスティナのグループにも顔を出しました。 そのあと次の部族のところに行くと 「なんで出稼ぎの連中のほうが先なんだ!」と非難の声が出ました。 宗派別にもシーア派のほうに先に行ったのは何故なんだ、とスンニー派の人々から言われてしまいました。 やれやれ、東洋から来た何も知らない一羽の旅がらすは辛いですねえ。 こんなに部族間のプライドが高いものとは思いもよりませんでした。

 日本のお祭りの場合、肝煎りの人が取り仕切って一つのプロジェクトとして一致団結して進んでいくのが普通ですが、ここではてんでばらばら、各部族単位で行われているようです。 まさに羽の色が同じ鳥だけで群がりたがるようですねえ。 ここの日本人社会でも彼らと付き合わず日本人だけで固まっているグループがいましたから、あまり非難めいた事は言えませんが・・・・。

 「郷に入らば、郷に従え」 私はこの世界で暮らす限りはこの生活様式に溶け込むよう、こうした集まりには出来るだけ顔を出すように心掛けてきました。 しかし、東は東、西は西、 その狭間にある中東ですら私たちにとって異文化です。日本の常識はここでは非常識、アラブの常識は日本では非常識という事で誤解を招くことが多いのです。 

                 
                            

 1990年代の湾岸戦争のあと、アラブ人の行動についてアメリカ人がこんなジョークを言っていました。

 アラブ人が二人でいると、お茶を飲みながら一日中おしゃべりをしている。 そこにもう一人が加わると政治の話がはずみ、アメリカはけしからん!ということになる。話はエスカレートしてあちこちに過激集団が誕生する。そうした連中がさらに集まって武装組織が出来上がる。 

 怒ったアメリカはそれを潰そうと試みるから、同じ羽色のプライドの高い集団は益々盛り上がって抵抗する。

 放っておけば、こうした組織はそのうちにお互いの意見が衝突し一人去り二人去り、やがてバラバラに分解してしまう。とどのつまりはアラブ人は二人だけになって、また、ひねもすお茶を飲みながら平和裡におしゃべりを楽しむようになる。

 黙って見ていれば良いのにブッシュはとんでもないことをしてくれたものだ・・・というものでした。だが、三人になればまた同じことを繰り返すことになりますね。 それは歴史が証明しています。


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