神を信ぜよ。だが、駱駝はしっかりつなぎ止めておけー実際に見たアラブの格言

  サウディアラビアの酷暑の夏が過ぎました。気候の良い冬から春にかけてアラブの人々は広大な砂漠の中にテントを張ります。男たちは夕方からお茶を飲んだり水煙草をくゆらせながらおしゃべりを楽しんでいます。話題も普段と違ったリラックスしたものになり私たち外国人にも興味をそそる話が出てきます。いわば、テントの中は情報交換の場ともいえましょう。ここでも話の中にたびたび格言が織り込まれます。 


「神を信ぜよ。だが、駱駝はしっかりつなぎ止めておけ」

 ある時、テントの中で私が耳にしたこの言葉は、砂漠の遊牧民の間の格言だそうです。

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 アラブ人は信仰深く毎日の生活ではその戒律を守って暮らしていきます。しかし、一緒にいる家畜には神の摂理など通じるわけはありません。 日本で言う「馬の耳に念仏」と同じです。だから管理を怠ると思わぬ災難にあう事もある、というのです。

 アブドラさんがその故事を説明してくれました。

 ある男の駱駝がいつも言うことをきかないので、彼はたびたび鞭で叩いたり水も飲まさず虐待を続けていました。 ある日、友人が彼のテントに訪ねてきました。 男は、貴重な財産である駱駝をいじめているところを見られたくないので遠くに追いやり、普段夜間は脚をしばっておかねばならないのにそのまま放って置きました。

 (ちなみに、アラブ人たちが頭に被っている黒い輪飾り(ゴトラ)はもともと駱駝の脚をつなぐものだそうです。 したがってイスラーム聖職者のムタワと呼ばれる人々は、不浄なものとして付けていません) 

 はるばる遠方から来た友人を歓待し、その夜、二人がお祈りをすませ寝静まった後くだんの駱駝が戻って来ました。

 朝、眼が覚めた友人は隣のテントが押しつぶされて、そこに寝ていた男がぺちゃんこになっているのを見つけました。

 普段いじめられている駱駝が主人たる男に復讐したのです。 ラクダは夜間には脚を縛っておけば、じっとうずくまったままだそうです。 この管理を怠ったのでとんだ災難にあってしまいました。 

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 やはり、家畜は愛情をもって飼育しなければいけませんね。 砂漠に放牧されている駱駝の顔を見るといずれも柔和な感じを受けますが・・・。 しかし1トンもある巨体にのしかかられたらたまりませんよ。

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 テントの中の話は長いが、それにつけても水たばこのパイプの長さよ。
 
 テントの中の話はまだまだ続きます。10時半になって、ひとりの男が 「もう帰らなくては・・・」 と席を立ちました。

 彼が帰った後、「アイツは女房の脚を縛りに行ったぜ」 「いや、縛られに行ったのさ」 と揶揄され、 大笑いが巻き起こりました。  
 
からかわれたくなかったら、最後まで席を立つな。

 これは私が作ったアラビアの格言です。

 駱駝の格言からとんだ話題になってしまいました。それにしても禁酒国のこの国、お茶とデーツ(なつめやしの実)や果物だけで真夜中まで付き合うのは・・・、眠いですねえ。

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