ふくろうは幸せを呼ぶ鳥、知恵の鳥

 フクロウは語呂あわせで、不苦労、福籠、福路、福老とお目出度い意味が込められています。何となく親近感のある鳥、我が家ではふくろうのコレクションをしています。旅に出た先々でふくろうグッズが店先に置かれていると、つい財布の紐がゆるんでしまうのが常です。 いまでは、我が家の至るところにそれらの置物が並んでいるわけですが、一体いくつあるのでしょうか。一つ一つ手にとってみました。

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旅行中に集めたふくろう(みみずく)グッズの一部
     
 やはり、ノスタルジックな思い出が頭を過ぎります。 これは、ギリシャ、ドイツ、フランスなどのヨーロッパの旅、 あっ、これは中国だ! 国内の温泉地。 安いものから、高いものまで、何度となく財布の中からそれぞれの国の紙幣が消えてゆきました。

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金のブローチ:この鳥の住みかは宝石箱の中、めったに外に出ることはない

 世界中でふくろうは幸せを呼ぶ鳥、守り神とされています。日本では夜行性のふくろうは冥界の使者や忍者のメッセンジャーとして闇に包まれ、ともすれば、暗いイメージが付きまといます。

 アイヌのシマフクロウは守り神(コタンクルカムイ)として崇められています。 アメリカの先住民族、南米のインディオもまたフクロウを神や精霊との仲立ちをする使いとしています。私がハワイアン・バンドで歌う「ナ・カ・プエオ」もこの鳥を舟に例えて唄ったハワイの民謡です。 

 「ミネルバのふくろうは黄昏に飛び立つ」18世紀末のドイツの哲学者ヘーゲルの言葉によって有名になり、現代ではふくろうは「知」の象徴の代名詞とされています。

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左:ギリシャコイン。今は同国のユーロ硬貨に同じデザインが施されている 
右:古代ギリシャの銀貨(絵葉書より)

 紀元前のギリシャではこの地に多く生息するふくろう(グラクウス)は 女神アテネの従者です。時代が経つともともと農業の神であったアテネは知恵の象徴に変わっていきました。古代ローマでは、女神アテネは学問の女神ミネルバに代わり、従者のふくろうも知恵の使いと見なされて来ました。

 今、さまざまな表情のふくろうたちを見ていると、忘れていた昔のことを思い出します。やはり、ふくろう様は認知症防止の知恵の使いですかねえ。
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   ピカソのふくろうの絵皿(絵葉書より)


 信じられないかもしれませんが、私がまだ、終戦のにおいも消えない子供の頃、住んでいた東京の古家の庭先に鬱そうと茂る、古木の洞にふくろう一家が住み付いていました。夜になると餌をさがして飛び回り、軒先で「ポーポウ~」と啼いていました。 

 幼い私はその声に怯えていました。何故なら、家の応接間には「ふくろう」の剥製が置かれていて、それが毎晩動き回るかと思ったからでした。いたずらしたお仕置きには、かならずこの薄暗い応接間に閉じ込められたものです。ふくろうはぎょろりとしたガラスの目で私を睨んでいました。気のせいでしょうか、羽ばたいた素振りをみせました。
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小学校高学年ともなると、怖さも薄れ、
「なんだ、こいつは剥製じゃないか、動いてみろよ」
 とふさふさの胸毛をむしってやりました。 

 その頃はもう、木の洞のふくろう一家は引っ越してしまったようで、声も聞けなっていました。

 その後もずっとこのふくろうの剥製は、新しい我が家に飾られていましたが、私が子供心に毟りとった胸毛もさることながら、主翼も取れてしまったので、数年前処分してしまいました。お見せする事ができないのが残念です。 

画像 東京都内の自然は少なくなりました。ふくろうは明治神宮や皇居にまだ生息していると聞き及びます。

 もう、周囲がビルに囲まれた我が家には野生のふくろうは帰ってくるはずもありません。

 だから、置物の彼らを愛でて過ごしてゆこうと思っています。 世間で言われる「ふくろうの知恵と幸せ」がいつやってくるのか、心待ちにしています

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