ミシュランのガイドブックを片手にーフランスぶらり旅

 ミシュランのレストランガイドブックの日本版(東京)が出版された。ミシュランとはフランスのタイヤメーカーで、あのユーモラスなタイヤ男のキャラが有名である。 早速買い求めた。手にとって見ると懐かしい思い出に駆られた。かれこれ、30年前の話である。その頃、私は海外勤務であった。年一回の一ヶ月あまりの休暇には時間と費用をかけて日本に帰るよりも、家族とともにミシュランのガイドブックを片手にヨーロッパ各地をゆっくりと見て回るのが常であった。


 気楽な旅である。 行き先の国の航空券を買って乗るだけだ。ホテルの予約もしていない、行き当たりばったりの旅である。、

 到着した空港でまず、HERTZかAVISで車を借り、そこでもらった一枚の地図を片手に、とりあえず行き先をきめて出発。 その次に立ち寄るのが最初に着いた町の本屋である。 まず、ミシュランのガイドブックだ。棚から最新版(英語)を取り出す。 

 ガイドブックは2種類あって、緑色が旅行、もう一つは赤い表紙のレストランの案内書である。ミシュランはタイヤメーカーだから、道路案内はいたりつくせりで、エトランゼにとって、大変重宝といえる。

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 車でぶらぶらと旅行するには、高速道路を避けて田舎道が良い。 この時のフランス旅行はパリを振り出しにロワール河のお城を見物し、もっと、南に行こうということになった。

 昼時、とある町にさしかかった。 ガイドブックを見てもなんという名の町かわからない。そこで、広場に行き尋ねる事にした。

 人が三々五々寄ってくる。 オバサンが私の4歳の息子を抱き上げてキスしようとした。息子はおびえてオバサンの顔を引掻いた。 どっと、笑い声が起こる。

 カタコトながら英語がわかる人がいて、この町に日本人が来たのは初めてだと言う。だから皆、歓迎しているということだけが理解できた。 引っ掻かれたオバサンも笑っている。 やれやれ、どう謝って良いやら・・・。 

 それはさておき、このままでは土地の事情がわからない。銀行で両替し方々、尋ねることにした。ここなら英語が通じ、何らかのインフォメーションが得られるだろうと思ったからだ。

 100ドルのトマスクックのトラベルチェックをフラン(当時)に換えるのに一時間以上かかった。 行員がすまなそうに言うには、高額だからパリの本店に図柄を電話で照会していたのだそうだ。 

 こんなのどかなフランスの田舎町であった。

 レストランの看板が目に入った。 どこでも良い、とにかく昼飯にありつかねば・・・。

 けっこうしゃれた店だ。 子供連れだがウエイターは快く席に案内してくれた。注文したのは肉の煮込み料理。一口食べて驚いた。美味い! 妻も同様の表情をしている。皿の残りの汁もパンできれいに拭いて食べた。 チップを余計に置いたのは言わずもがな、だ。

 食休み。公園のベンチに座り、先ほど銀行で聞いたこの町の名前を緑の表紙のガイドブックで引いてみた。やっと、このあたりの地理が飲み込めてきた。

 「あのレストランの料理、美味しかったわね」

 この妻の言葉にもしや、と思って今度は赤いミシュラン・ガイドブックを開き、レシートに書かれた町とレストランの名前を探した。なんと、その店には一つ星☆のランクが付けられていたではないか!

 さすがグルメの国、フランスだ。なにか心が豊かになった。


 ☆☆☆

 残念ながらこの原稿を書くにあたって、この町の写真もメモもない。当時のガイドブックも手元に残っていない。仕方なく、思い出だけをたよりにパソコンのグーグルアースで検索してみたが、町の名前も位置もわからなかった。この日はトウルーズ近郊に泊まったからそこからさほど離れていない町と思われる。                             

ーフランス田舎道 ぶらりドライブー

そのー1 ☆☆☆


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と、ある町にたどり着いた。 露天のマーケット。

画像 オバさんが生きたままのにわとりを下げて帰る。 今日の夕食のローストチキンにするのか、それとも庭で飼ってタマゴを生ませるのだろうか。 

 時間がゆるゆると過ぎてゆく。しかし退屈はしていない。 のどかな外国の風景を楽しむ。

 さて、そろそろ次の町へ行こうか。                         
                            
そのー2 ☆☆☆

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 旅のある日、立ち寄った町。まず、その町の広場か教会を目当てに車を進める。

 なぜなら、町(村)の中心にあり、人がたくさん集まっているからだ。しかし、英語が一言も通じなかった。

 時間はもう、午後の4時、そろそろ今日泊まるホテルを探さなければならない。いささか焦ってきた。車を広場にむける。

 親切な人はどこにでもいる。 言葉は判らないがホテルの場所の地図を描いてくれた。

 「メルシー、ムッシュー」片言のフランス語でお礼を言う。 通じたようだ。

 苦労して見つけたところは町外れの☆☆ホテルだったが、サービスも食事も良い。無機質な都会の一流ホテルよりずっとくつろげる。

 夕食時、 厨房から美味しそうな匂いは漂ってきた。
                     

そのー3 ☆☆☆

画像 この民宿には3日間もお世話になった。 女主人はひねもすベランダで編み物をしている。ご主人は勤め人か、洒落たスポーツカーで朝早く出勤する。夕食は、みんなが食卓に揃ってお祈りをし、十字をきってから食べ始める。 敬虔なカトリック信者であろう、壁の棚には十字架とマリア様の像がかざってある。言葉はわからないが、夫婦の親身なもてなしは心にひしひしと伝わってくる。 

しかし、民宿だからミシュランのガイドブックには載らないだろうな。

画像 この民宿の付近にある森の中、子供たちは無邪気に駆け回る。 私は草むらに寝転んで、青い空を見上げ、鳥のさえずりを聞く。 自然がいっぱい。
いい気持ちだ・・・。











長いドライブ旅行の疲れをゆっくりと癒す事が出来た。明日はパリに戻ろう。                               

☆☆☆

 日本バージョンのミシュラン・ガイド(レストラン)東京版が今日(11月22日)発売された。早速読んでみた。 昔のガイドブック(フランス版)よりか薄く、装丁は現代風である。 

 東京はグルメの都、世界中の料理が食べられる。 ☆☆☆は8店。でも、結構なお値段のお店だけのようだ。 中央区と港区に7店も集中しているのが気にかかるが・・・。☆☆は25店 ☆は117店、合計150店だ。これを全部トライするとすれば、一財産すっとんでしまう勘定だ。 まあ、数店に留めておこう。

 日本料理店が多いのは、お国柄だから当然。しかし、フランス・レストランが47店なのに、私の好きなイタメシはたった8店とは片手落ちの感がある。あれだけ東京に多い中華料理も5店しかない・・・。 ドイツ料理にいたっては一軒もない。 

画像 しかし、ランク付けが行われた瞬間、マスコミはほっては置かない。お店もまたこれぞと宣伝に努めるだろうから満員。予約をとるのも大変だろう。 グルメツアーも出てくるかも知れない。すでに発売当日というのにそのフィーバーぶりはTVなど、マスコミの餌食となっている。

 人いきれでワイワイ・ガヤガヤ、あの閑静なフランスの田舎の、一つ星☆レストランのようにはいくまい。  ミシュランの評価は味だけではなく、店の雰囲気、サービスも考慮されるから、次のバージョンでは落とされてしまう店も出てくるだろう。

 マスコミに騒がれたレストランほど、料理の味やサービスが落ちてくるのが常のようだ。
願わくはレストランはその勲章におぼれることなく、その味とサービスだけを永きに渡りお客に提供してもらいたいものだ。

MICHELIN GUIDE 東京2008 発行: 日本ミシュランタイヤ(株)
                                      
 通りすがりの名も知れぬレストランで食事を済ませ、うむ、これは! とガイドブックを開き、そこにその店の名前とランクが載っていたならば、最高の幸せを感じるのは私だけではあるまい。 

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