なぜ、日本人の舌に合わなければ和食とよべないのか

 農水省では海外日本食レストラン認定事業を進めています。和食はこうあるべし、と日本人の味覚を押し付けるので海外では「スシポリス」と揶揄され評判が良くないようでs。カルフォルニア・ロールの寿司ですら、今や日本人の舌に取り入れられています。 北京の寿司チェーン店では、チョコレート巻きやメロンなどが載ったフルーツ寿司が若者達に人気だといいます。 食の味はその場所や時代に応じて変化していくものではないのですか。


 しかし、タイのすしネタは本物なのでしょうか?

 最近、シカゴの寿司屋でティラピア(カワスズメダイの仲間)やレッド・スナッパー(フエダイの仲間)をマダイと偽って握っていると報道されました。こればかりはちょいと問題です。 私はこれらの魚を何回も食べる機会がありましたが、マダイとは味も食感もまったく違います。しかし、名前がわかっていればそれなりの味が楽しめるのに。ティラピアもレッド・スナッパーもけして、不味い魚ではありません。

 日本のスーパーでもティラピアはイズミダイ、南米産のメロという魚もギンムツという名で店先に並んでいました。外国名では売れないので和名を付けたそうです。 日本食の材料にするために、日本の名前にしてしまうとは・・・。 

 西も東もインチキだらけ。 まったく、やりきれませんねえ。 やはり、スシポリスの出番かな。

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        真鯛: これが 本当のタイだ !

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       レッド・スナッパー: フエダイの仲間、味、姿かたちも違う

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     ティラピア: 淡水魚だからイズミダイ、考えましたネ

 外国の料理を和風に変えるー日本人の特技

 ラーメンは中華そばを日本風に変えたもの、香港や台湾では、それを「日式麺」とわざわざ断っています。韓国の人も日本の好みにあわせて、あえて、あまり辛くない浅漬けのキムチを作っています。トンカツやカレーだって、洋食を日本人の舌にあわせて発展させてきたものでしょう。

 各国料理のレストランが乱立する日本、本国の味をそのまま提供している店が、この中に何軒ありますか?オリジナルの味とは違うとその国から苦情が寄せられたことがあるのでしょうか? 和食の味がおかしいと、つべこべ言うのは日本だけのようです。 

 来日した外国人には、たいがいテンプラ、すきやきが振舞われます。だが、これは日本古来のものではありません。もともとポルトガルなど西欧の肉料理が発展してきたもの、しかし、多くの日本人はこれを「和食」と称して彼らに奨めるのです。 

和食のすべてが外国人の舌に合うのでしょうか?
 
 来日した外国の人のすべてがしゃぶしゃぶを美味いと言って帰国すると日本人は思っているのでしょうか。 砂糖を牛肉の上にドバッとかけるスキヤキ鍋には、Oh!My God! 彼らはびっくりしていました。生卵の味と共に、はたして彼らの味覚に合ったか疑問です。

 外人サンに「とても美味しいから」と高級な和食を奨めても・・・・・。
    
 
 中東のさる国のVIPが家族とともに来日したので、私は会社の上司からその接遇を仰せ付かりました。

 京都を訪れた時です。やはり日本の味を知ってもらいたいと思って、夕食は有名な老舗の割烹料理店の「しゃぶしゃぶ」をアレンジしました。

 VIPご一家は、初めのうちは珍しがって食べ方についてあれこれ質問していましたが、そのうち何故か不機嫌になって黙りこんでしました。子供たちは食べ慣れない食事に飽きてしまって、障子に指で穴を開けて遊び始めました。 それとなく,たしなめても、面白がってやめません。

参ったな・・・。

 ご夫妻は黙ったままです。これは大変だ。なにか、不満でもあるのかと聞いたところ、味が無い、まずい。そして、ケチャップとソースを持って来いといいます。 仕方なく要求どおりにしますと、それを見かねた仲居さんから連絡を受けたのか、この店の女将が出てきました。そして型どうりシャブシャブはこうしてタレを点けて食べるのです。とても美味しいですよと、にこやかに説明をはじめました。

 私は、それはもう何度も彼らに言った。けれども、料理自体が舌に合わないらしいから、仕方ないと弁解しました。 

 方々が破れた障子を見渡し、また、こんな失礼なことを言われた女将の顔からは、たおやかな京女の笑顔が消えて、こめかみに青筋が立っているようです。 

 参ったな・・・。

 要人の奥さんが言いました。
 「これ、何? 紙切れみたい」 
 フォークの先には「湯葉」が垂れ下がっています。彼女はそれをポイと別の皿に捨てました。

 いたたまれなくなった女将サンは席をたって出て行きました。

 子供たちが破った障子の弁償も含め、少なからぬ金額の勘定を払い領収書を貰う時、私は勤め先の会社の名前を、恥を忍んでも言わざるを得ませんでした。

 見送りの際、女将は私の耳元でこう言いました。
 「もう、二度とお越しにならんといておくれやす !!」  

 参ったな・・・。

 私たちが去ったあと、お清めの塩がまかれたのではないでしょうか。

 翌日、VIPは言いました。 
「昨晩の食事はひどかった、あのあと、ホテルで神戸ステーキを食べた、あれはうまかった」
そう言って、昨日の私の接遇の失敗を不問に付してくれました。

 私だけ、松坂牛と湯葉のしゃぶしゃぶを堪能してしまったのですが、やはり、外国のお客には食べなれたお国の味に合った食事のもてなしをするべきでした。

 食文化、味覚文化の違いがこんなトラブルになるなんて考えもしませんでした。 
                
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 「お客サン! しょうゆを付けないでそのまま召し上がってください」
 「だけど、それじゃあ、味も素っ気もないだろ」

 栃木県の温泉の宿、ざる豆腐を注文した時のことでした。半信半疑で、口にすると、
 「ンッ!・・・うまい!」

 やはり私は日本人でした。  

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