スコットランドの旅ーちょっとスリルな出来事
スコットランドを妻と子供たち2人で旅行していた時だ。 一週間の予定でレンタカーでエディンバラを振り出しにセントアンドリュース、パースを見物。 ピットロッホリーを経由し、更に9号線を遡りハイランド地方のインバーネスに行く。ここで、ネス湖でネッシーを見物しようと立ち寄った。 その後、スカイ島を一巡し82号線で最終地のグラスゴーにむかう。途中幹線をそれ、山道の風光明媚な渓谷に差し掛かった時である。前方の道に車の列が出来ている。近づくと銃を担いだ迷彩服の兵隊が手を振って制止した。窓をあけると「ここで止まっていなさい!」という。交通事故ではなさそうだ。
すわ! テロか 過激派との交戦か!とびっくり。 兵隊は「エクササイズ(演習)です」 と、笑顔を見せて敬礼して去っていった。 一般道路が軍の演習で通行止めになっているのである。
止まっている車からは人々が降りて、ガードレールの下の渓谷をのんびりと見下ろしている。われわれも近づいていった。
立っていた兵隊が 「見学してもよいが、撮影は許可できない」とこれもにこやかに言った。
渓谷の下の砂洲に積まれた土嚢の中には機関銃座がしつらえられ、2-3人の兵士が守っている。砂洲のそこ、ここに小さな旗がはためいている。
突然、上流から数発の銃声が聞こえた。砂洲の機関銃座から、続けさまに発射音が渓谷の静寂を破る。
まるで、映画のシーンを見ているようだ。いや、これは本物だ! 上流から、何隻ものゴムボートが現れた。中の兵士たちがボートから降りて散開しはじめた。
また、機関銃が唸る。それとともに自動小銃のかろやかな響きが交差し、谷にこだまする。
正面の兵士が後退、 別の一隊が横から射撃を開始する。 迫撃砲の模擬弾が破裂して、煙をあげている。そのうちに、砂洲の敵に見立てた旗に向って突進してきた兵士たちが、次々と模擬手投げ弾を投げる。 土嚢の機関銃が沈黙した。
笛が吹かれた。 演習は終了。 この間40分間。 渓谷に静寂がもどった。小鳥のさえずりが聞こえてくる。
見物人から拍手が起こる。 いやあ~迫力満点。日本では考えられない事だ。平和ボケの日本人の感性なのか、ただでショウを見て何か得をしたような気がした。
私も思わず拍手をしてしまった。だが、見世物じゃない、これはテロや内乱に対応できるよう、真剣な演習なのだ。見物人の拍手は国防を担う兵士へのねぎらいのものなのだ。私は恥ずかしくなって、叩く手をやめてしまった。
止められていた車の群れが次々と発車してゆく。40分間も待たされ、日本だったらこんな渋滞を、ドライバーたちは許すだろうか。また、一般道路での演習などもってのほかであろう。
11月1日の日経新聞夕刊のコラム、「あすへの話題」に作家の黒井千次氏が「山の交通止め」という題で執筆されている。中国の旅行中に私と同じ経験をされたのである。 中国ではお国柄、演習を見ることはご法度だろうが・・・・・。
外国では、こうした一般道路で軍の演習を行う事は良くあるらしい。有事の際に即応するため当然の措置と国民も理解しているのだ。 日本では規定された演習地でしか活動出来ない自衛隊は事が起こった時、ただちに対応できるのだろうか。
付記:
一週間のスコットランドのドライブ旅行は大変楽しい思い出である。この旅はスケジュールもきめずに行きあたりばったり。 AVISでは車の予約もしていなかったためにフォードのボロ車を借りる羽目になった。途中エンスト、パンクなどトラブルが多かったが、その都度、地元の人々が助けてくれた。
ピットロッホリーは丁度、フェスティバルの最中だった。バグパイプの行進、公民館では子供たちの民族舞踊が開催されていた。 男性のスカート(キルト)のタータンチェックの柄はみな同じだ。スコットランドのクラン(氏族)の象徴の柄で、固有の一族のみ使えるという。だから、地域ごとに違いその種類は数百種あるのだそうだ。
(私たちにおなじみのバーバリーのチェック柄ブランドは調べてみると、カントリータータンと呼ばれる柄から取ったもので、公募によるものだ)
英国には「B &B]と呼ばれる民宿が多い。瀟洒な家の玄関をよく見ると B & B,すなわち、Bed and Breakfast のサービスをする民宿の看板がある。今夜はここに泊る事とした
夕食を近くのレストランですませ、B & Bに戻ると、女主人が「9時に居間にいらっしゃい、ビスケットとお茶の用意がしてありますから」と言う。 ほかの宿泊客たちと歓談するためだ。
疲れてもいるし、英語でしゃべるのが億劫なので「頭が痛いから」と遠慮した。9時になると、ベッドルームのドアがたたかれ、彼女がアスピリンと水を持ってきた。
「さあ、これを飲んでからいらっしゃい!」 参ったな・・・。
ネス湖に着いた時は丁度、雨。 黒ずんだ湖面はいかにも怪獣が住むのにふさわしい。
「オーイ!ネッシー!」 と叫んだが、姿を現してくれなかった。
側にいた地元のおじさんはネッシーが現れないかと、ここに毎日のように来るのだ、と言っていた。
道すがら、古い館が目に付く。 スコットランド豪族の館であったのか。今でも人は住んでいるのだろうか。美しい風景の連続に写真の被写体には事欠かない。
グラスゴーの空港で車を返却し、エアバスでロンドンにもどる。すっかりスコットランドに魅了された私は、ロンドンの下町の楽器店でバグパイプを買った。 妻は勿論バーバリーで買い物だ。
止まっている車からは人々が降りて、ガードレールの下の渓谷をのんびりと見下ろしている。われわれも近づいていった。
立っていた兵隊が 「見学してもよいが、撮影は許可できない」とこれもにこやかに言った。
渓谷の下の砂洲に積まれた土嚢の中には機関銃座がしつらえられ、2-3人の兵士が守っている。砂洲のそこ、ここに小さな旗がはためいている。
突然、上流から数発の銃声が聞こえた。砂洲の機関銃座から、続けさまに発射音が渓谷の静寂を破る。
まるで、映画のシーンを見ているようだ。いや、これは本物だ! 上流から、何隻ものゴムボートが現れた。中の兵士たちがボートから降りて散開しはじめた。
また、機関銃が唸る。それとともに自動小銃のかろやかな響きが交差し、谷にこだまする。
正面の兵士が後退、 別の一隊が横から射撃を開始する。 迫撃砲の模擬弾が破裂して、煙をあげている。そのうちに、砂洲の敵に見立てた旗に向って突進してきた兵士たちが、次々と模擬手投げ弾を投げる。 土嚢の機関銃が沈黙した。
笛が吹かれた。 演習は終了。 この間40分間。 渓谷に静寂がもどった。小鳥のさえずりが聞こえてくる。
見物人から拍手が起こる。 いやあ~迫力満点。日本では考えられない事だ。平和ボケの日本人の感性なのか、ただでショウを見て何か得をしたような気がした。
私も思わず拍手をしてしまった。だが、見世物じゃない、これはテロや内乱に対応できるよう、真剣な演習なのだ。見物人の拍手は国防を担う兵士へのねぎらいのものなのだ。私は恥ずかしくなって、叩く手をやめてしまった。
止められていた車の群れが次々と発車してゆく。40分間も待たされ、日本だったらこんな渋滞を、ドライバーたちは許すだろうか。また、一般道路での演習などもってのほかであろう。
11月1日の日経新聞夕刊のコラム、「あすへの話題」に作家の黒井千次氏が「山の交通止め」という題で執筆されている。中国の旅行中に私と同じ経験をされたのである。 中国ではお国柄、演習を見ることはご法度だろうが・・・・・。
外国では、こうした一般道路で軍の演習を行う事は良くあるらしい。有事の際に即応するため当然の措置と国民も理解しているのだ。 日本では規定された演習地でしか活動出来ない自衛隊は事が起こった時、ただちに対応できるのだろうか。
付記:
一週間のスコットランドのドライブ旅行は大変楽しい思い出である。この旅はスケジュールもきめずに行きあたりばったり。 AVISでは車の予約もしていなかったためにフォードのボロ車を借りる羽目になった。途中エンスト、パンクなどトラブルが多かったが、その都度、地元の人々が助けてくれた。
ピットロッホリーは丁度、フェスティバルの最中だった。バグパイプの行進、公民館では子供たちの民族舞踊が開催されていた。 男性のスカート(キルト)のタータンチェックの柄はみな同じだ。スコットランドのクラン(氏族)の象徴の柄で、固有の一族のみ使えるという。だから、地域ごとに違いその種類は数百種あるのだそうだ。
(私たちにおなじみのバーバリーのチェック柄ブランドは調べてみると、カントリータータンと呼ばれる柄から取ったもので、公募によるものだ)
英国には「B &B]と呼ばれる民宿が多い。瀟洒な家の玄関をよく見ると B & B,すなわち、Bed and Breakfast のサービスをする民宿の看板がある。今夜はここに泊る事とした
夕食を近くのレストランですませ、B & Bに戻ると、女主人が「9時に居間にいらっしゃい、ビスケットとお茶の用意がしてありますから」と言う。 ほかの宿泊客たちと歓談するためだ。
疲れてもいるし、英語でしゃべるのが億劫なので「頭が痛いから」と遠慮した。9時になると、ベッドルームのドアがたたかれ、彼女がアスピリンと水を持ってきた。
「さあ、これを飲んでからいらっしゃい!」 参ったな・・・。
ネス湖に着いた時は丁度、雨。 黒ずんだ湖面はいかにも怪獣が住むのにふさわしい。
「オーイ!ネッシー!」 と叫んだが、姿を現してくれなかった。
側にいた地元のおじさんはネッシーが現れないかと、ここに毎日のように来るのだ、と言っていた。
道すがら、古い館が目に付く。 スコットランド豪族の館であったのか。今でも人は住んでいるのだろうか。美しい風景の連続に写真の被写体には事欠かない。
グラスゴーの空港で車を返却し、エアバスでロンドンにもどる。すっかりスコットランドに魅了された私は、ロンドンの下町の楽器店でバグパイプを買った。 妻は勿論バーバリーで買い物だ。
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