モナリザは日本の団体客に微笑んでくれるのか
何年か前でしたか、パリに立ち寄った時、またルーブル美術館に行きました。勿論、ダ・ヴィンチのモナリザをもう一度見るためでした。私と妻は混雑をさけ、ゆっくり鑑賞しようと、朝一番に入館しました。
モナリザはいつものように微笑んでいます。 館内の人影もまばらで、右側からも左側からも飽きもせず見ることが出来ました。 いささか疲れて前のベンチで休んでいました。ほどなく、団体客がきて遠くから見ていたモナリザの微笑は、人影に隠れ見えなくなってしまいました。
すぐにべつの団体がきます。次に日本人の団体がやってきました。やはり人気があるんだな、そう思って見ていました。
ガイドさんは長々と説明しています。何人かはがやがやと私語を交わしているので、彼は大きな声で「聞こえますか!」といいました。
すると、周囲から「シッ!」とたしなめの声が聞こえます。
ガイドさんはなおも、ながながとしゃべっています。すると、次に待っていた欧米の団体から 一斉にブーイングが沸き起こりました。あわてて立ち去ろうとした日本人団体客の数人がこともあろうに、絵を撮ろうとカメラのフラッシュをたいたのです。
係員が飛んできて、いきなり、モナリザを照らしていた照明のスィッチを切ってしまったのです。微笑は暗闇に消えました。
その係員(女性)はガイドにむかって、指をつきつけながら怒っています。多分、フラッシュを使うなと注意書きがあるのに!といっているのでしょうか。そういう、勝手な人々にはモナリザは見る権利がないと照明を消したようです。
さあ、怒ったのは待っていた次の団体客、こぶしを振り上げて口々に日本人を罵っています。
10分ぐらい経ったでしょうか、また、照明がつきました。絵の前には大分,列ができてしまいました。この絵の鑑賞ができなくてスキップした先ほどの団体も戻ってきました。
私たちも、ベンチから立ち上がり、もう一度、鑑賞の列に加わりました。しかし、絵の中のモナリザの目とあった時、彼女の微笑がやけに皮肉っぽく見えたのは気のせいでしょうか。
欧米の団体のガイドさんは簡潔な説明で、あとの時間は絵の鑑賞に費やしています。多分、キリスト教文化の中に育った彼らは レオナルド・ダ・ヴィンチが何者か、モナリザはどうして描かれたかはもう頭の中にはいっているからなのでしょうね。
日本のガイドさんは初歩の知識から事細かに説明しています。参加者は予め、手元の旅の資料を見て概要を頭に入れておけば、こんな迷惑なことは起こらないと思います。
その後も、スペインやイタリーの美術館で日本人の団体が名画の前を長々と占領している風景を見かけました。 また、このようなトラブルが起きてしまわないか、と心配したものです。
日本の展覧会場では粛々と鑑賞する人々が一歩外国に出ると、この有様、どうしてなんでしょうね。 マナーが満点、とはいえない私が言うのはなんですが、館内ルールを守ってお互いが譲り合って楽しく見ることこそ、名画鑑賞の心得である、ことぐらい知っています。
もっとも、これ以上にマナーが悪く、目に余る迷惑行為をする、他の国の団体が増えています。だからといって、俺達だけじゃないよ、と自らなぐさめるのもどうかと思いますが・・・・。
モナリザはその頃はいろいろな名画とともに展示されていました。現在は特別室に移されたそうです。多くの人に鑑賞しやすくなったと思います。
ヨーロッパを旅行するには、キリスト教やその文化の知識を頭に入れてから旅立つと、その面白さが倍増します。(そういう私も上っ面だけの知識しかありませんが)そして、モナリザを良く鑑賞してください。そうすれば彼女はあなたにもっと、微笑んでくれますよ。
― 最近のダ・ヴィンチ・コードのフィーバーに際し、一言 ―
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