寒い冬 長火鉢に想う

 今季の冬は寒いですね。日本だけでなくヨーロッパにも寒気がおしよせています。逆に南半球のオーストラリアでは気温が44度の猛暑、カリフォルニアでは大洪水でワイン畑が水没してしまった、とニュースは伝えています。新潟や秋田など日本海側では毎日の雪おろしが大変、まあ、良く雪がふりますね。雪との戦い、本当にそのご苦労を察します。皆さん頑張ってください。 一方、太平洋側はカラカラ天気、ここにも大陸の寒気は押し寄せてきています。地球温暖化といいながらも、この寒さには耐えられず、暖房をきかせた部屋でぬくぬくと暮らす毎日、雪国の方々に申し訳ないです。
 
 私が小学生のころの昭和20年代は、冬はやはりこんな寒い気候でした。庭先に植えられた蘇鉄はわらで覆われ、その下に据えられたつくばいには厚い氷が張っています。その氷を取り出し庭石にぶつけて割ったり、庭の土に盛り上がった霜柱をさくさく踏むだけでなく、わざと蹴散らすような悪戯をした思い出があります。 当時の我が家の居間の暖房は、木製の長火鉢とこたつしかなかったと記憶しています。すっかりかじかんだ手に息を吹きかけながら、居間に入るなり長火鉢にまたがって凍えた身体を温めたこともありました。だから、私は冬の季節が嫌いでいつも春の訪れを待ちうけたものです。

   寒い勉強部屋、ちっとも暖かくならない小さなガスストーブの青白い炎を見ながら試験勉強をしていました。 寒い、寒いを連発しながら、「西高東低は冬の気圧配置図」と繰り返し暗記したものです。
   (暖かいアラジン製の石油ストーブが入ったのはそれからずっと後のことでした)
 


 寒さに耐えられず、母が針仕事をしている居間のこたつに飛びこみました。母は仕事の手を休め、「どれ、かしてごらん」と、すっかり冷たくなった私の手を温い手でいつまでもさすっていてくれました。こたつのそばの長火鉢の上には、鉄瓶がかろやかな音をたてて湯気を立てています。その鉄瓶のお湯で母が熱い番茶を入れてくれました。時折、外の木枯らしが家の窓ガラスをゆらしています。その音を聞きながら、勉強なんかもうイヤだ、このままずっとここに居たいとも思ったものでした。

 
 今ではこの長火鉢はその役目を終えて、新しく建て替えたわが家のリビング・ルームに、インテリアとして置かれています。鉄瓶も灰もなく、その中には本が入れられ上にガラス板が敷かれています。昭和の初め結婚した母のお嫁入り道具の一つだったのでしょう、くすんだ茶色の木製の長火鉢には母の里方の紋が彫られています。

 四分の三世紀も我が家に置かれたこの長火鉢、それが私の子供たちにどのような思い出を残すのか、また、将来どのような使われ方をするのか、想像をたくましくしながらこの文を終えたいと思います。

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