お前が水を飲んだ井戸に石を投げてはならない―実際に見たアラブの格言
このところ寒気が南下して日本列島に居付いてしまって寒い日が続いています。朝、顔を洗う時、温水器で水が温まるまで流しっぱなし。水は大切に使わねばならない・・・頭ではそう思いつつも身体の方が赦してくれません。つい蛇口を開けっ放しにしてしまいます。子供の頃は、寒い朝にぬるくなった湯たんぽのお湯を母が洗面器に入れてくれたっけ・・・。思い出が頭を過ぎります。
私が永らく仕事で暮らしたサウジアラビアのほとんどは砂漠です。当然水が必要ですからオアシスの水がない所では生活用水は海水を蒸留して作ります。そのコストはガソリンの3倍かと思われます。しばしば断水もありました。そのため、会社からは洗車や家庭菜園に水を撒くことを控えるよう節水を求められていました。アラブの格言の水を節約するよういわれた途端、誰もが水を飲み始める
といわれる通りそれを守っている人は僅かでしたが、 絶えず水の事を念頭に置かねばならない毎日でした。
私がはじめてサウジを訪れ東京に戻ったあと、アラビアのロレンスという映画が封切られました。冒頭で他人の井戸の水を無断で飲んだ男が持ち主に射殺される場面がありました。なんて残酷なんだとスクリーンの中のロレンスの表情、それを平然と見下ろす男。かの地では水は生きんがために欠かせぬものです。持ち主に黙って貴重な水を飲むことは泥棒と同じ、許されるものではないでしょう。 乾いた砂漠の数々のシーンが私の体験したサウジアラビアとだぶってしまいました。映画を見終わったあと、待ちかねたようにからからの喉を水で潤した事を憶えています。
お前が水を飲んだ井戸に石を投げてはならない
持ち主の好意で提供された水がたとえ濁ったものであっても乾いた喉を潤してくれた水に感謝しなければならないとアラブの格言で諌めています。 山水の多い風光明媚なわが国では水はただ同然の固定観念がありますが、水不足がしばしば起る現代の日本、節水に努めなくてはなりませんね。
東南アジア、アフリカ諸国では水不足が深刻化しています。そこに登場したのが上総(かずさ)掘りという井戸掘りの技法。これは明治時代の日本人が発明した技術です。 わが国ではとっくに姿を消していますが、これらの諸国では広がり始めているそうです。なにしろ、現地で手に入りやすい竹を使って人力だけの安いコストで数十メートルの井戸が掘れるといいます。 また、不純物を含んだ井戸水をバイオ改良して飲料水にすることも日本の技術によって完成されています。TVで放映された「こんなに澄んだ水ははじめて」という現地の人の声にぐっとくるものがありました。。
将来わが身に降りかかってくるかも知れない水不足、「お前が水を飲んだ井戸に石を投げてはならない」このアラブの格言を良くかみ締めて、アラビアの沙漠の体験を思い起こし節水に努めねばと思いました。
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