投稿

7月, 2007の投稿を表示しています

江戸のキリシタン屋敷跡を訪ねて

イメージ
  フランシスコ・ザビエルが日本を訪れたのは天文18年(1549年)でした。以来、キリスト教は来日した宣教師たちによって日本各地で布教され、キリシタン大名、天正遣欧少年使節団、支倉常長等の渡航、キリシタンの迫害などが私たちの知るところとなっています。キリスト教はその当時の日本の統治者たちにとって、貿易に利用できる半面、デウスを頂点とするその教義が広まることは彼等にとって危険なものでもあったのです。  秀吉による外国人宣教者追放や二十六聖人の殉教に始まり、徳川幕府が基礎を固めてきた慶長18年(1613年)には家康・秀忠のキリシタン禁教令が発せられました。高山右近などの海外追放、そして、日本各地のキリシタンたちにとって、もっとも過酷な迫害がはじまったのは三代将軍家光の時代からでした。  しかし、武士のみならず庶民に根づいたキリストの教えは、なかなか消えなかったのです。  幕府は、見せしめのため残酷な刑罰で信者に棄教を迫りました。信者の多くは殉教を選びました。元和9年(1623年)、江戸(三田、札の辻)においても、家康直臣であった原 主水たち50名が全員引き回しのうえ、火あぶりの刑に処せられました。これは元和・江戸の大殉教と呼ばれています。  捕らえられ拷問の結果、これに耐えかね棄教した宣教者は「転びバテレン」とよばれました。作家の遠藤周作氏は 小説「沈黙」の中でその状況を克明に描いています。 小石川小日向の江戸切支丹屋敷跡 -地下鉄丸の内線 茗荷谷駅下車(徒歩約20分)  今回訪れたのは、このような幕府のキリシタン禁教を背景とした江戸における収容施設、 切支丹屋敷 です。正保2年(1645年)頃、幕府大目付、井上筑後守政重が自分の屋敷内に作ったと伝えられています。  切支丹屋敷は現在の東京都文京区小石川4丁目茗台中学校の脇から地下鉄丸の内線のガードをくぐった辺にありました。 今は閑静な住宅街の中、屋敷跡の碑文があるのみでまったくその面影はありません。四千坪の敷地があった屋敷跡の周囲を歩いてみて、その規模がどれほどのものであったかを想像することができます。  今は 住宅街の中、キリシタンたちが住んでいた屋敷の面影は無い ただ、切支丹坂の名前のみ が残っている  幕府は、どんな残酷な処刑をおこなっても、キリシタンたちの信仰がますます高まるばかりで効果が薄いと知るや対策を変え

蚊取り線香のけむりと猫の頭

イメージ
  アッ! 蚊がいる! 今年も蚊の季節となりました。貴方が網戸もしないで、窓を開けるからよ! 妻に怒られ、あわててベープを探します。無いぞ、器具は見つかりましたが肝心のマットもリキッドもありません。 まいったな、なおも引き出しの奥を探ると、数年前戸外でバーベキュウをやった時の古い蚊取り線香が出てきました。昔から見慣れた「金鳥の渦巻き」です。もう期限切れで効果がないのでは、と思いつつもライターで火をつけました。昔はそれをブタの形の容器に入れたものですが、今は家にはありません。   しばらくすると、昔なつかしい匂いが部屋に立ち込めます。 何となく夏の気分になるから、私の古くなった大脳皮質もまだ健在な証拠です。 蚊取り線香のけむりはクルクルと私の頭の中をアーカイブして、大失敗をした記憶をよみがえらせてくれました。   小学生のころ、夏ともなれば神奈川県辻堂の祖母の家に母や姉妹と共に訪れたものです。そこでは、昆虫採集や海岸の貝拾い、また、小川で小鮒すくいや夜の花火など、わくわくするような毎日でした。  ある日、夏休みの宿題のため貝の標本を採集しようと海岸を歩いていると、足元の波打ち際に大きな貝殻があるのを見つけました。手に取ってみると、それは貝ではなく海水できれいにさらされた猫の頭蓋骨でした。   ふーん、猫の頭はこんな格好をしているのか。 学校の理科室にある人間の模型のそれと比較してみました。そうだ!この研究は夏休みの宿題にもってこいだ。「人間と猫の頭の骨の形が違うわけ」これをノートに書いてこの標本と共に提出したら、先生は「君は将来、動物学者になりたいのか、それとも、お医者さんか?」と驚くだろうな。そう思いながらこの頭蓋骨をを持ち帰りました。  家に戻ると、きのうで蚊取り線香がなくなったのでしょう、新しい箱が机に置いてあります。  くず入れには、蚊取り線香の空箱が捨ててあります。標本を入れるには格好の箱です。 この中に入れた頭蓋骨は、ふたが浮いてしまいますが何とか納まりました。  ここで、大失敗をしてしまいました。机の上の新しい蚊取り線香の箱の横に、それを並べて置いたのです。  夕暮れ時、この家の、ねえや(お手伝いさん)がいつもの通り蚊取り線香の火をつけようとしました。  「ギャッ!」という声とドタンとなにか倒れる音がしました。隣室にいた皆が駆けつけると、ねえやが白目を剥