サウジアラビアの美味― カルーフ(羊)の丸焼き
前回、アラブの格言 ーものの値段は交渉できめるべきであるー の中で、生きた子羊2頭を値切りに値切って買ったくだりをご紹介しました。この2頭の子羊はどうなったのでしょうか? 気になる方もいるようです。これはその続編です。 中東ではカルーフ(羊)は一般的なアラビア料理です。サウジアラビアの家庭料理はカプサといってぶつ切りにした肉をカルダモンなどの香辛料をきかして炊き込んだものが一般的ですが、結婚式や昇進などお目出度い席ではカルーフ(子羊)は丸ごと蒸し焼きにしたものが饗されます。 この材料の生後3ヶ月の子羊は毎週水曜日の夕方に羊市場に出されます。遊牧民の貴重な収入源ですから羊飼いたちは方々から集まってきます。ちなみにここで売られるのは雄だけで雌は繁殖のため食用にはしません。30頭の群れでは雄は1頭で事足りますから余った雄の子羊は食用にされます。 砂漠で放牧中の羊の群れ ともあれ、今週の休日(イスラムの休日は木、金です)に会社の部下たちとパーティをやろうと子羊を買いに来たわけです。 アラブ人スタッフの助力もあって安く買えたこの2頭を車のトランクに押し込んで、屠殺場に向かいます。 その日はもう時間外、やむなく私の社宅に連れ帰り庭の木につな;ぎました。私の子供たちは大喜びで羊に水やビスケットなど与えています。 ・・・・・・・・・・・・・ 翌日の朝、嫌がる羊を無理やり車のトランクに押し込めました。子供達の「かわいそう~やめて~」という声を後に心を鬼にして屠殺場に着くと、あんなに車に積まれるのを嫌がって暴れていた羊たち、今度はトランクの奥に入って出ようとはしません。 殺されるのを本能的に察したのでしょうか・・・。次々とくる車に積まれた羊たちも同じです。係員は手馴れた調子で引きずり出します。 屠殺場の内部は思ったより清潔で、コンクリートの床の中央に作られた溝に張られた鉄網の上には何頭もの羊が並んでいます。私の2頭の羊も右端におかれました。イスラムではハラールといって家畜を屠る前にはお祈りを唱えなければなりません。その立会人が必要です。 順番が来て、私の羊の解体が始まりました。 「私はイスラム教徒ではないのだが」といいますと、 「かまわない、オレがお祈りをするのを良く聴いていて欲しい」とのことで、儀式がはじまりました。 お祈りの言葉とともに羊