シンドバッドの夢―アラビアのダウ船
アラビアの伝統的な木造のダウ船、この歴史は紀元前後にさかのぼると言われています。 私が中東に勤務していた1970年代には、クウェイトやサウジ、またドバイなどのアラビア湾岸諸国で、巨大タンカーの行き交う中、一本あるいは二本マストに大きな三角の帆を張ったダウ船がアラビアンブルーの海を航行しているのをよく見かけました。まさに船乗りシンドバッドの航海を彷彿させる光景でした。 ダウ船はアラビア海やインド洋で活躍した木造の帆船で一切釘を使わないのが特徴です。ただ私が乗船した近代のダウ船はボルト・ナットが使われ、エンジンも装備されていました。外板の木材は、チーク材かココやし材とのことですから南インドあたりで多く建造されたようです。また、防水にはタールや瀝青が使われているので、そばを通るたびにツンとした匂いが鼻をつくのを覚えています。 現在でも、この木造船は建造されており、ドバイでは年に一度ダウ船のレースが開催されています。100隻以上の白い帆を張ったダウ船が航行する様は、昔のアラビアの船乗りたちの意気を継承するものとして壮観な光景を見せてくれます。 また、観光としてドバイの夜景を楽しみながら、船上でアラブ料理を楽しむ、クルーズも人気ということです。 季節のグリーティング・カードにもダウ船の絵柄が用いられているのは珍しくありません。 これはアラブの友人たちから送られてきたカードです。゙ 我が家にその頃求めたダウ船の模型があります。 船尾にはクウェイトの国旗が掲げられています。クウェイトの魚市場のそばの港には、当時多数のダウ船が係留されていました。帰任の際、記念にとクウェイトのファハヒールの町で買い求めたものです。 ぎらつく太陽のアラビアの海でもう一度シンドバッドの航海を再現したいものです。 暇人のつぶやき: このダウ船はペルシャ湾(アラビア湾)の真珠採りにも一般的に利用されていたそうですが、あるアラブの友人は日本の養殖真珠がこの地方の天然真珠を駆逐してしまった。貝に核を入れた真珠は本当の真珠ではないと憤慨していました。天然真珠はいびつなものが多く、それだけに真円のものは高い値がつくのだそうです。養殖ものは値段も手ごろで多くの人に愛用されているのですから、一部の金持ちのためではない。日本の養殖技術は世界中の女性たちに貢献しているのだーと答えておきました。