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千本のナツメやしの樹は一つの泉を枯らすー実際に見たアラブの格言

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  私の家には一鉢のナツメやしの樹があります。6年前モロッコ旅行の際に市場(スーク)で干したナツメやしの実(デーツ)を買い求め、東京で食べたあとのその種を植えたところ発芽したのです。乾燥した砂漠と違った日本の気候が合わないのか、今でも1メートルあまりの高さにしか育っていません。 それでも毎年特徴のあるぎざぎざの若葉が出てきます。 千本のナツメやしの樹は一つの泉を枯らす とアラブの格言にありますが、砂漠地帯で水源が存在するオアシスではかならずと言ってよいほどナツメやしの林が目に付きます。  緑の土地といわれるサウジアラビアの首都リアドもこれらの樹木が豊富です。サウジの建国の父といわれるアブドラ・アジズ王(イブン・サウド)はラシード家が支配していたリアド城を奪回する際、何日もこのナツメやしの実デーツを食べて機会をうかがっていたという逸話は有名です。サウジ王家の紋章にはこの樹がモチーフとして描かれています。  また、イスラームの聖典であるクーラン(コーラン)の第19 マリア章(マルヤム)の25には、 「またナツメヤシの幹を、あなたの方に揺り動かせ、新鮮な熟したナツメヤシの実があなたに落ちよう」 出典: 日訳・注解 聖クーラン -イスラム経典― aller;"> 世界イスラーム連盟 日訳クラーン刊行会より と主の声があり、エルサレムに赴くイエス・キリストの母である身重のマリアにこの栄養豊かな実を与え、いたわったと書かれています。 註) キリスト教ではイエスは神の子と称されていますが、イスラームでは偉大な預言者の一人として見なされています。 オアシスの町 サウジアラビア中部のホフーフ、泉は生活用水だけでなく人々の憩いの場ともなっています。  昔からナツメやしと泉は中東の人々にとって身近でもあり、また貴重なものなのです。たった千本のナツメやしの樹が泉(オアシス)の水を吸い上げて枯渇させてしまうとは思いませんが、近年、サウジアラビアでは人口の増加と産業用のため、年々地下水の埋蔵量が減少してることから、海水蒸留システムが普及しており、大都市にはパイプラインで送られ地下水と混合されて使用されています。   水は植物と動物たちにとって生命を維持するに切っては切れぬ存在です。このナツメやしの格言は 自然のサイクルを守って、けして偏よってはならぬ という教訓なのでしょう。