ネズミの正義よりも猫の暴政のほうがましだー実際に見たアラブの格言
1年半ほど前のアラブの春、チュニジアからはじまってエジプト、リビアの民衆は独裁者を倒しました。 しかし、その後は軍部の圧力や部族間の対立でせっかく訪れたアラブの民主化は春霞み、先が見えていません。シリアの内戦、これもまた宗派や部族間の対立のみならず関係各国の思惑が先行して混沌の道を辿っています。 地平線まで花に埋もれた砂漠の春 (リアドーサウジアラビア)の郊外ー2月中旬) 現在の中東の国境はかつての列強の利害で勝手に線引きされたもの、中身は同じ文化と言語を有する民族です。 だから、国全体でまとまるという意識よりも家族、部族の結びつきが強いのではないでしょうか。 どうも足踏み状態になっています。 アナン前国連事務総長が特使として事態の収拾に努めてはいますが、 喧嘩の仲裁人は拳骨の三分のニは覚悟すべきである とアラブの格言にあるように事態を打開できるとは思いません。彼らの指導者ではないからです。 部族長や長老の権力は絶大です。一族を守ってくれる指導者だからです。 宗教においてもいえると思います。 サウジアラビアの王様はイスラームの聖地、メディーナとマッカの守護者です。 莫大な石油収入を背景に国民に対する福祉や教育にも行き届いた政策で、保守主義でありながら、この国は中東一安定しているように思えます。 しかし、シリアの80%を占める同じスンニー派の反体制派を援助するなど、この国にもいささか、きな臭い空気だ漂ってきましたね。 40年ぐらい前でしたか、私の勤めていた会社でアラブのジャーナリストを招いて中東セミナーが開催されました。 その席で当時の中東情勢を説明するに、 「現在、中東には一人の有能な指導的人物がいる。その名は サダム・フセイン という」 今でこそ暴虐なイラク大統領だったと知られている人物ですが、当時は無名の存在でした。私も初めて知った名前でした。その後、彼はあれよあれよという間に大統領となり、良かれ悪しかれイラクの政治を推し進め、末は暴政の名の下に失脚、死刑を執行されたのはご承知の通りです。 アラブの格言では ネズミの正義よりも猫の暴政のほうがましだ と言われています。イラクの人々は長いあいだこの格言を肌で感じていたのでしょう。ましてや、リビア、エジプトの民衆もそうであったにちがいありません。 今見るに、アラブの春は